生命保険というと、まっさきに思い浮かぶのは終身保険ではないでしょうか。
終身保険は知名度が非常に高いですので、何を保障するかはご存じだと思います。
そうです、死亡保障ですね。
死亡保障保険、なんていうと、響きが非常に悪いですから、終身保険と名付けられたのだと思います。
同じ死亡保障の保険として、定期保険があります。
では、この2つの保険の違いってなんでしょう?
終身保険と定期保険の違いって?
終身と定期という言葉は、保険では当たり前のように使われます。
- 終身:一生涯の保障
- 定期:一定期間の保障
医療保険やがん保険などの保険期間、払込期間においても、この言葉は使われます。
ちなみに、保険期間と払込期間の意味は、
- 保険期間:保険がいつまで保障してくれるのか?
- 払込期間:保険料を払い込む期間。ローン期間のようなもの
となっています。
終身医療や終身がん保険、という言葉をよく聞きますが、これは保障が一生涯続き、保険料も亡くなるまで払う、という保険ですね。
がん保険の終身型、定期型の違いについては、以下の記事にまとめていますので、興味がありましたら、参考にしてみてください。
ちょっと話がそれてしまいましたので、戻しますね。
終身保険と定期保険の違いについてです。
この2つは、死亡保障という点では同じなのですが、大きく異なる点が2点あります。
- 保険期間・払込期間の違い
- 貯蓄型か掛け捨て型か
では、それぞれについて見ていきます。
保険期間・払込期間の違い
終身保険は、その名の通り保険期間は終身です。
定期保険もその名のとおり、保険期間は一定期間です。代表的な期間としては、10年、15年、20年などがあります。
定期保険の場合、保険期間と払込期間が同じ全期払い、という保険が多いです。
保険期間が10年の場合、払込期間も10年、という感じですね。
対して、終身保険は、保険期間に比べて払込期間のほうが短い、短期払いと言われる商品が主流です。
定年である60歳や65歳といった収入がある期間に払込を終えてしまうケースですね。
保険期間:終身のことを、保険期間=99と言ったりします。数値化することでわかりやすくするためですね。
60歳短期払いの終身保険の場合ですと、
- 保険期間=99
- 払込期間=60
こうすると、なんとなくしっくりきますよね。保険期間に比べて、払込期間のほうが短い、というのがよくわかります。
ここまでをまとめると
期間の違いという視点から見ると、終身保険と定期保険の違いは、保険期間の違い、と言えます。
- 終身保険の保険期間=99
- 定期保険の保険期間=10~30くらい
払込期間は、定期保険は全期払いです。
終身保険は短期払いが多いです。ただし全期払いもあります。
- 保険期間=99
- 払込期間=99
というケースですね。

定期保険についてですが、定期の保障期間が過ぎればそれで終わりではありません。
大抵の定期保険が、自動更新という制度を持っています。
定期の期間が過ぎれば、自動的にその期間、延長してくれる制度ですね。
たとえば、
- 30歳のときに10年の定期保険に加入
- 40歳で定期保険満了
- 40歳で定期保険を10年間自動延長
という感じです。
ただ、注意しなければいけないのは、自動更新する際は、自動更新するときの年齢で保険料が再計算されるということです。
先ほどの例ですと、加入時は30歳の年齢で保険料が計算されます。
しかし、延長するときは、40歳の年齢で保険料が計算されます。
これによって、保険料が倍近く変わったりすることもありますので、自動更新の際は注意が必要です。
貯蓄型か掛け捨て型か
これまで、期間という切り口で、終身保険と定期保険を見てきました。
次に、保険の特性から終身保険と定期保険の違いを見てみます。
ざっくりと分けると、終身保険と定期保険には以下のような違いがあります。
- 終身保険:死亡保障+貯蓄
- 定期保険:死亡保障
終身保険には貯蓄性があるのに対し、定期保険は貯蓄性がありません。いわゆる掛け捨て、というタイプですね。
終身保険は、貯蓄保険料に多くの保険料を回していますので、保険料が高くなりがちです。
対して、定期保険は危険保険料をメインに構成していますので、割安の保険料で、高額な保険金の保険に加入することができます。
貯蓄保険料や危険保険料については、以下の記事をご参照ください。
ただ、覚えておいて頂きたいのは、上記の記事にも記載していますが、
- 終身保険でも定期保険でも危険保険料は同じ
ということです。
「掛け捨てはイヤだから終身保険を選びました」
という方が多いのですが、終身保険にも掛け捨ての部分はあります。
いわゆる危険保険料がそれですね。
貯蓄保険料があるため、あたかも損をしていないように見えるのですが、何事もなければ、危険保険料が掛け捨てになっている、という点は、定期保険も終身保険も同じです。
終身保険と定期保険の使い分けについて
まず大前提として、終身保険も定期保険も死亡保障の保険です。
これはつまり、ご自身のための保険ではなく、誰かのための保険ということです。
葬儀費用、という観点からすると、ご自身のため、と言えなくもないですが、亡くなった後の処理をする方に残すお金、と考えるのが妥当でしょう。
ですので、お金を残すべき方がいない場合は、不要な保障なんですね。
この前提をふまえたうえで見ていきましょう。
まず、終身保険は貯蓄性があり、かつ、途中で事故にあっても少なからず保険金を受け取ることができます。
用途としては、定年までの死亡リスクに備えつつ、定年後は、解約してセカンドライフの費用にあてる。
もしくはそのまま保険を継続し、万が一のときは、保険金で葬儀費用などをまかなう、という使い方になります。
保険金としては、100~300万円程度が妥当なところだと思います。
それ以上の保険金を受け取ろうとすると、保険料が結構な金額になってしまいます。
次に、定期保険ですね。
定期保険の用途としては、家計を支えている方が加入するのが一般的です。
家計を支えている方に万が一のことが起こった場合でも、ご家族が金銭的に困らないようにするためですね。
そのため、
- 保険金は高くなることが多い
- 必要となる保険金はどんどん減っていく
それぞれについて見てみましょう
保険金は高くなることが多い
以下のような家族構成を想定してみます。
- ご主人
- 奥さん
- お子さん(0歳)
- 生活費:30万円
このご家族で、働いているのはご主人のみだとします。
ここで、ご主人に万が一のことがあった場合、お子さんが独立するまでの生活費は、
- 30万円 x 12ヶ月 x 22年間 = 7,920万円
生活費以外の収支として、
- 遺族年金:1ヶ月20万円
- 子供の教育費:1,000万円
とします。
そうすると、必要になるお金は、
- 必要なお金:7,920万円(生活費) + 1,000万円(教育費) - 20万円(遺族年金) x 12ヶ月 x 22年間 = 3,640万円
となります。
お子さんが独立するまでの、奥さんとお子さんの生活費、教育費をまかなうためには、3,640万円の定期保険に加入しておけば良い計算となります。
3,640万円って大金ですね。
若くして、そこまでの貯蓄がある方はマレだと思います。
そのため、万が一のリスクを保険でおぎなうのは正解と言えます。
必要となる保険金はどんどん減っていく
では、また先ほどのご家族を例にしますね。
ご主人に何事もなく10年が経過したものとします。
10年の定期保険に加入していて、保険の更新が近づいてきました。
では、10年後の現在、いくらの保障が必要なのでしょう?
- ご主人
- 奥さん
- お子さん(10歳)
- 生活費:30万円
- 教育費:800万円
- 遺族年金:20万円
お子さんが独立するまでの生活費と教育費を計算しますと、
- 必要なお金:30万円(生活費) x 12ヶ月 x 12年 + 800万円(教育費) - 20万円 x 12か月 x 12年間 = 2,240万円
2,240万円となりました。
定期保険の更新時は、10年前に必要だった金額ではなく、1,000万円以上安い保険金の保障でことたりる計算となります。
一般的には、10年前より10年たった現在のほうが、保険料が上がります。
ただ、それは同じ保険金で更新した場合の話です。
このように、必要な保障は下がってきますので、それに合わせて保険金を減額することで、無駄な保険料を支払わなくて済みます。
また、あらかじめ必要な保険金が下がることを前提として組まれた保険もあります。
逓減定期保険という保険です。
いわゆる三角の保険というもので、保険金が時間の経過とともに減っていく保険です。
通常の定期保険よりも保険料が安いことが多く、無駄が少ないのが特徴です。
まとめ
終身保険、定期保険いずれも死亡保障という特性をもちます。
そのため、ご自身に万が一のことがあった場合、困る方がいるかどうかが、加入するかどうかの第一関門になります。
終身保険に加入する理由としては、
- 大きな保険金は必要ない
- 葬儀代を残しておく
この2つがポイントになると思います。
終身保険、定期保険いずれを選んでも、危険保険料部分は掛け捨てになりますので、貯蓄性を求めて終身保険に加入するのはオススメしません。
貯蓄をしたいけれど、資産運用がよくわからない、という方は、ネット銀行の定期保険をオススメします。
定期保険に加入する理由としては、
- 高額な保険金が必要である
この1点です。
万が一、稼ぎ頭の方が亡くなってしまった場合、心情的に辛いのは当然なのですが、その後の経済的リスクも相当大きいと思います。
少なくとも経済的リスクをおさえるために定期保険を利用するのは、選択肢の一つとしてあげるのに十分な理由ではないかな、と思います。
定期保険に加入する際には、無駄の少ない逓減定期保険や、更新の際に必要な保険金額を再度見積もりし、減額するなどの手段を取って、なるべく上手に家計をやりくりすることをオススメします。
その際に、ライフプランシミュレーションが役に立つかもしれませんので、もしよろしければご参照ください。